春一番が吹いた4月中旬の温かさという日の直後、冷たい雨の2月28日、「鈴木正男 & Swing Times」のライブがあった。(とはいえ、夜には雨は上がっていたが‥)
寒いとは言っても、その寒さに角がとれてきたのは春の兆し。さらに春を感じたのはSWING TIMESの華やかな演奏である。
いつもながらだが、オープニング・テーマの「Let’s Dance」イントロの鈴木正男のクラリネットとそれに続く滑らかなアンサンブルを聴くと、やはりどこかウキウキしてくる。この冬は一段と寒かったせいか、今回は一層そう思うのだろう。




いつもなら「Let’s Dance」の後は続けて「Don’t Be That Way」のはずだが、今回はちょっと違った。「Jersey Bounce」だった。永年SWING TIMESの演奏を聴いているが、あまり覚えがない。リーダーの鈴木正男に、何か心境の変化でもあったのだろうか。
それにしてもこの日この後も度々聴かせてくれるが、ベテラン唐木洋介、田辺信男のテナーは渋く味わい深い‥
そして次の曲もテムポ良く「Mission To Moscow」から「Cherry」。「Mission To Moscow」はともかく「Cherry」はあまり聴かない。このSWING TIMESでも季節物で年に1回、それもいつもは4月のライブでだが、その頃はサクラも終わっているからと今年はその前にということで、花のベニー・グッドマン春一番のおしるしに持ってきたのであろう。
これですっかり春めいた。
気分も変わって、長田明子のミディアム・テムポの「It Could Happen To You」で春の宵もふっと艶っぽくなった。
しかも珍しく間に入った鈴木孝二のアルト・サックスと、鈴木直樹のクラリネットがまた滅法良かった。これだからSWING TIMESのライブは堪らない。
長田明子のヴォーカルの間奏は、いつもメンバーの誰かがすっくと立って吹く。これがまた得も言われぬ名演なのである。これを聴くだけでも価値がある。
そして「Where Or When」。前にも書いたが、長田明子ならではのしみじみと聴き入って味わえるのが楽しい。ちなみにここでの間奏はトロンボーンの内田光昭。夜の闇に溶け入りそうな吹き回しが印象的だ。
長田明子の第一部のラストは、グッドマンと若きペギー・リーでお馴染みの「Why Don’t You Do Right」。考えてみれば、オーケストラをバックにこの歌を歌う人が他にいるだろうか。聴いていてふとそう思った。何ともいえない投げやり感が味になっていた。


この日の圧巻は、「Roll E’m」と「Oh! Baby」である。
もともとドラマチックなナンバーで聴きごたえがあるが、大橋高志(pf)、蓮見芳男(gui)、田辺信男(ts)、唐木洋介(ts)、鈴木孝二(as)、鈴木直樹(as)、大堀 博(bs)、鈴木正晃(tp)など、それぞれソロが素晴らしかった。
いずれにしても、これだけのメンバーがそろっての演奏は他ではとても聴かれるものではない。
第二部はいつものようにグレン・ミラー特集から始まったが、中でもこの日の「In The Mood」は出色だった。
リーダーの鈴木正男も言っていた。
「永年一緒にやっているメンバーだからこその、とはいえそうはなかなかない出来栄え。日頃の様々な胸のつかえが一辺に降りるような演奏だった!」と絶賛していた。
毎日のように演奏しているプロでも、そういうことがあるのだと教えられた。この日のお客さんは得をしたと言えよう。




得をしたといえば、ライブの最後の最後、アンコールでちょっとしたハプニングがあった。
最後のプログラムは鈴木章治作曲の「Festival And Children」(祭りと子供たち)だったが、当然のようにアンコールのおねだりがあって、曲紹介も無く演奏を始めたのがなんと「The Pink Panther」(ピンク・パンサーのテーマ)。
これもグッドマンの演奏の中にもあるが、あまり知られていないと思う。そういう意味ではハプニングでもあり、大いに得をしたと言えよう。
後で鈴木正男に聞くと━「この日に合わせて書いていた」のだそうだ。
そういえば以前に、こんな曲面白いね、と手元にあるCDをあれこれと渡しておいたものの中に「The Pink Panther」のテーマもあった。それを、キミに知らせると演奏前にブログに書かれちゃうから秘密にしておいた、と言う。




しかもアンコールで、さらにタイトルも言わずに━もちろん誰もが知っているナンバーだけに意表を突いた効果は大きかった。こんな洒落心は大歓迎である。
歌舞伎の「三人吉三巴白浪」のお嬢吉三じゃないが━
「こいつぁ、春から縁起がいいわぃ!」
そういえばお嬢吉三もピンク・パンサーも盗賊。妙に符号が合っている‥と一人悦に入ってしまった。
そして「ピンク・パンサー」のテーマの後、最後の最後の最後はお馴染みの「Good Bye」。
グッドマンではお馴染みだが、SWING TIMESでは普段ほとんどやらない。鈴木正男がこの曲を聴くとホントに皆終わってしまいそうでイヤだ、と言ってやらなかった。
今までにこの日を合わせて2回だけ記憶がある。
演奏曲目
第一部
01 Let’s Dance
02 Jersey Bounce
03 Mission To Moscow
04 Cherry
05 Mostly Mozart
06 It Could Happen To You (vo)
07 Where Or When (vo)
08 Why Don’t You Do Right (vo)
09 A Ring With Pearl
10 Prelude To Kiss
11 Roll E’m
第二部
01 Stardust
02 Johnson Rag
03 A String Of Pearls
04 Moonlight Serenade
05 In The Mood
06 Get Out Of Town (vo)
07 Fools Rush In (vo)
08 East Of The Sun (vo)
09 Oh! Baby
10 Sleepy Lagoon
11 Festival And Children
12 The Pink Panther
13 Good Bye
※メンバーは写真にカーソルを合わせると名前が分かります。
※次回のライブは4月26日(火)「南青山MANDALA」である。
寒いとは言っても、その寒さに角がとれてきたのは春の兆し。さらに春を感じたのはSWING TIMESの華やかな演奏である。
いつもながらだが、オープニング・テーマの「Let’s Dance」イントロの鈴木正男のクラリネットとそれに続く滑らかなアンサンブルを聴くと、やはりどこかウキウキしてくる。この冬は一段と寒かったせいか、今回は一層そう思うのだろう。




いつもなら「Let’s Dance」の後は続けて「Don’t Be That Way」のはずだが、今回はちょっと違った。「Jersey Bounce」だった。永年SWING TIMESの演奏を聴いているが、あまり覚えがない。リーダーの鈴木正男に、何か心境の変化でもあったのだろうか。
それにしてもこの日この後も度々聴かせてくれるが、ベテラン唐木洋介、田辺信男のテナーは渋く味わい深い‥
そして次の曲もテムポ良く「Mission To Moscow」から「Cherry」。「Mission To Moscow」はともかく「Cherry」はあまり聴かない。このSWING TIMESでも季節物で年に1回、それもいつもは4月のライブでだが、その頃はサクラも終わっているからと今年はその前にということで、花のベニー・グッドマン春一番のおしるしに持ってきたのであろう。
これですっかり春めいた。
気分も変わって、長田明子のミディアム・テムポの「It Could Happen To You」で春の宵もふっと艶っぽくなった。
しかも珍しく間に入った鈴木孝二のアルト・サックスと、鈴木直樹のクラリネットがまた滅法良かった。これだからSWING TIMESのライブは堪らない。
長田明子のヴォーカルの間奏は、いつもメンバーの誰かがすっくと立って吹く。これがまた得も言われぬ名演なのである。これを聴くだけでも価値がある。
そして「Where Or When」。前にも書いたが、長田明子ならではのしみじみと聴き入って味わえるのが楽しい。ちなみにここでの間奏はトロンボーンの内田光昭。夜の闇に溶け入りそうな吹き回しが印象的だ。
長田明子の第一部のラストは、グッドマンと若きペギー・リーでお馴染みの「Why Don’t You Do Right」。考えてみれば、オーケストラをバックにこの歌を歌う人が他にいるだろうか。聴いていてふとそう思った。何ともいえない投げやり感が味になっていた。


この日の圧巻は、「Roll E’m」と「Oh! Baby」である。
もともとドラマチックなナンバーで聴きごたえがあるが、大橋高志(pf)、蓮見芳男(gui)、田辺信男(ts)、唐木洋介(ts)、鈴木孝二(as)、鈴木直樹(as)、大堀 博(bs)、鈴木正晃(tp)など、それぞれソロが素晴らしかった。
いずれにしても、これだけのメンバーがそろっての演奏は他ではとても聴かれるものではない。
第二部はいつものようにグレン・ミラー特集から始まったが、中でもこの日の「In The Mood」は出色だった。
リーダーの鈴木正男も言っていた。
「永年一緒にやっているメンバーだからこその、とはいえそうはなかなかない出来栄え。日頃の様々な胸のつかえが一辺に降りるような演奏だった!」と絶賛していた。
毎日のように演奏しているプロでも、そういうことがあるのだと教えられた。この日のお客さんは得をしたと言えよう。




得をしたといえば、ライブの最後の最後、アンコールでちょっとしたハプニングがあった。
最後のプログラムは鈴木章治作曲の「Festival And Children」(祭りと子供たち)だったが、当然のようにアンコールのおねだりがあって、曲紹介も無く演奏を始めたのがなんと「The Pink Panther」(ピンク・パンサーのテーマ)。
これもグッドマンの演奏の中にもあるが、あまり知られていないと思う。そういう意味ではハプニングでもあり、大いに得をしたと言えよう。
後で鈴木正男に聞くと━「この日に合わせて書いていた」のだそうだ。
そういえば以前に、こんな曲面白いね、と手元にあるCDをあれこれと渡しておいたものの中に「The Pink Panther」のテーマもあった。それを、キミに知らせると演奏前にブログに書かれちゃうから秘密にしておいた、と言う。




しかもアンコールで、さらにタイトルも言わずに━もちろん誰もが知っているナンバーだけに意表を突いた効果は大きかった。こんな洒落心は大歓迎である。
歌舞伎の「三人吉三巴白浪」のお嬢吉三じゃないが━
「こいつぁ、春から縁起がいいわぃ!」
そういえばお嬢吉三もピンク・パンサーも盗賊。妙に符号が合っている‥と一人悦に入ってしまった。
そして「ピンク・パンサー」のテーマの後、最後の最後の最後はお馴染みの「Good Bye」。
グッドマンではお馴染みだが、SWING TIMESでは普段ほとんどやらない。鈴木正男がこの曲を聴くとホントに皆終わってしまいそうでイヤだ、と言ってやらなかった。
今までにこの日を合わせて2回だけ記憶がある。
演奏曲目
第一部
01 Let’s Dance
02 Jersey Bounce
03 Mission To Moscow
04 Cherry
05 Mostly Mozart
06 It Could Happen To You (vo)
07 Where Or When (vo)
08 Why Don’t You Do Right (vo)
09 A Ring With Pearl
10 Prelude To Kiss
11 Roll E’m
第二部
01 Stardust
02 Johnson Rag
03 A String Of Pearls
04 Moonlight Serenade
05 In The Mood
06 Get Out Of Town (vo)
07 Fools Rush In (vo)
08 East Of The Sun (vo)
09 Oh! Baby
10 Sleepy Lagoon
11 Festival And Children
12 The Pink Panther
13 Good Bye
※メンバーは写真にカーソルを合わせると名前が分かります。
※次回のライブは4月26日(火)「南青山MANDALA」である。
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