ジャズ好きのある男が、バーモント州の州都モントピリアのホテルに泊まった。
ビジネスを済ませホテルに戻ってくると、ロビーの奥のボウルルームらしき扉の奥からあのクラリネットに縁どられた柔らかいサウンドが洩れてくる。
近くに寄ってみると、入り口のたて看板に「今夜のバンド“グレン・ミラーオーケストラ”」とあった。
根が好きなだけに男はうれしくなりボウルルームの扉を開けて中へ入ろうとして、フト足を止めた。
窓際の小さなテーブルと椅子の脇の、身だしなみを調えるためのミラーに、窓から覗く満月が映っていたのである。まさに「Moonlight In Vermont」。
そして扉の奥から洩れ聴こえてくるのが、おあつらえ向きに「Moonlight Serenade」。
彼は中へ入るのを止めてこうなれば徹底的に凝ってやろうと、ロビーに戻り通りかかったホテルマンを捕まえるとある酒を注文し、さっきの場所に戻った。
最近はあまり馴染みもなく、バーの棚の奥に1本だけ残っていたと言うトウモロコシ(80%)とピート香を付けていない大麦麦芽(20%)を混ぜ連続蒸留したボトルとグラスをバーテンが持って来た。
窓際の小さな椅子に腰を下ろし、立てかけたミラーに映るムーン・ライトを浴びながら、さらに扉の奥からの緩やかに流れるようなムーンライト・セレナーデに浸りながら、そしてグラスの中のグレン(ウイスキー)を舐めながら、何もかもすっかりグレン・ミラーに酔いしれた。

グレン・ミラーのテーマでもある「Moonlight Serenade」を心地よく聴いていて、こんな小噺をムリヤリ捻ってみた。
何年か前までは、「鈴木正男 & SWING TIMES」のライブの、グレン・ミラーのナンバー中心の第2部は必ずこの「Moonlight Serenade」で始まった。
最近はちょっとしたサプライズというか、珍しいナンバーを挟んでお馴染みのナンバーを次から次へと楽しませてくれる。
この「Moonlight Serenade」が始まると会場の雰囲気がパッと明るくなり、お客さんの間にホッとした空気が流れ、拍手が湧く。本当にみんなこの曲が好きである。
グレン・ミラーの古いレコードを引っ張り出して改めて聴いて見ると、テンポがかなり遅い。
普段あちこちで聴くテンポに慣れ普通に思っていた耳には、驚くほどゆっくりとしている。はじめ驚くが、いつの間にか引き込まれて聴き入ってしまう。そうか、昔はこんなテンポでやっていたんだ。
我々が盛んに聴いていた昭和30年代もこんなテンポだったんだろうか。
それにしてもいつから今のようなテンポになったのだろう。一度色々なオーケストラの演奏を、1945年(グレン・ミラーが亡くなった翌年)頃から録音月日を確かめながら聴いてみようか。面白いかもしれない。
さて「鈴木正男 & SWING TIMES」のグレン・ミラーもののレパートリーというと、もちろん「Moonlight Serenade」だけではない。
・In The Mood
・American Patrol
・String Of Pearl
・Pennsylvania 6-5000
・Little Brown Jug
・St. Louis Blues March
・Tuxedo Junction
・Song Of The Volga Boatman
・Danny Boy etc.
これらのナンバーは特にジャズファンでなくても、普通に知られているから凄い。
ベニー・グッドマンの演奏で普通に知られているナンバーが何曲あるだろう。「Sing, Sing, Sing」、「Memories Of You」‥グレン・ミラーほど知られているかというと、どうだろう‥
単純に比較はできないが、それにアメリカと日本の事情の違いもあるだろうが、いずれにしてもグレン・ミラーのスタイルはメロディーが分かりやすく掴まえやすい(覚えやすい)。

慣れ親しんできたグレン・ミラーのヒット曲を、次から次へとたっぷりと聴くというのも、実に贅沢なもんである。しかもベニー・グッドマンとセットで━
そう言えば、ずいぶん前になるが横田基地在籍の太平洋空軍バンド「パシフィック・ショウ・ケース」と一緒に、「Glenn Meets Benny」(1981年 主催グレン・ミラー生誕地協会日本支部)と題したコンサートがあった。
グッドマンもミラーも若かりし頃、かつてベン・ポラック楽団で一緒だったことがあると言うことから生まれた企画で、もちろん「パシフィック・ショウ・ケース」がグレン・ミラーを、「鈴木正男 & SWING TIMES」がベニー・グッドマンを、まさにバンド合戦さながらにやった。歌はジェリー伊藤とタイムファイブと、それに長田明子。それは楽しいコンサートだった。
(そう言えば、「グレン・ミラー生誕地協会」の青木さん、最近ライブに見えないがどうしただろう。連絡してみよう…)
「ムーンライト・セレナーデ」に誘われて…
どことなくキラキラしてロマンチックな気分になって、何だかじっとしていられなくなる。
次回の「鈴木正男 & SWING TIMES」のライブは2月28日(月)南青山「MANDALA」である。
ビジネスを済ませホテルに戻ってくると、ロビーの奥のボウルルームらしき扉の奥からあのクラリネットに縁どられた柔らかいサウンドが洩れてくる。
近くに寄ってみると、入り口のたて看板に「今夜のバンド“グレン・ミラーオーケストラ”」とあった。
根が好きなだけに男はうれしくなりボウルルームの扉を開けて中へ入ろうとして、フト足を止めた。
窓際の小さなテーブルと椅子の脇の、身だしなみを調えるためのミラーに、窓から覗く満月が映っていたのである。まさに「Moonlight In Vermont」。
そして扉の奥から洩れ聴こえてくるのが、おあつらえ向きに「Moonlight Serenade」。
彼は中へ入るのを止めてこうなれば徹底的に凝ってやろうと、ロビーに戻り通りかかったホテルマンを捕まえるとある酒を注文し、さっきの場所に戻った。
最近はあまり馴染みもなく、バーの棚の奥に1本だけ残っていたと言うトウモロコシ(80%)とピート香を付けていない大麦麦芽(20%)を混ぜ連続蒸留したボトルとグラスをバーテンが持って来た。
窓際の小さな椅子に腰を下ろし、立てかけたミラーに映るムーン・ライトを浴びながら、さらに扉の奥からの緩やかに流れるようなムーンライト・セレナーデに浸りながら、そしてグラスの中のグレン(ウイスキー)を舐めながら、何もかもすっかりグレン・ミラーに酔いしれた。

グレン・ミラーのテーマでもある「Moonlight Serenade」を心地よく聴いていて、こんな小噺をムリヤリ捻ってみた。
何年か前までは、「鈴木正男 & SWING TIMES」のライブの、グレン・ミラーのナンバー中心の第2部は必ずこの「Moonlight Serenade」で始まった。
最近はちょっとしたサプライズというか、珍しいナンバーを挟んでお馴染みのナンバーを次から次へと楽しませてくれる。
この「Moonlight Serenade」が始まると会場の雰囲気がパッと明るくなり、お客さんの間にホッとした空気が流れ、拍手が湧く。本当にみんなこの曲が好きである。
グレン・ミラーの古いレコードを引っ張り出して改めて聴いて見ると、テンポがかなり遅い。
普段あちこちで聴くテンポに慣れ普通に思っていた耳には、驚くほどゆっくりとしている。はじめ驚くが、いつの間にか引き込まれて聴き入ってしまう。そうか、昔はこんなテンポでやっていたんだ。
我々が盛んに聴いていた昭和30年代もこんなテンポだったんだろうか。
それにしてもいつから今のようなテンポになったのだろう。一度色々なオーケストラの演奏を、1945年(グレン・ミラーが亡くなった翌年)頃から録音月日を確かめながら聴いてみようか。面白いかもしれない。
さて「鈴木正男 & SWING TIMES」のグレン・ミラーもののレパートリーというと、もちろん「Moonlight Serenade」だけではない。
・In The Mood
・American Patrol
・String Of Pearl
・Pennsylvania 6-5000
・Little Brown Jug
・St. Louis Blues March
・Tuxedo Junction
・Song Of The Volga Boatman
・Danny Boy etc.
これらのナンバーは特にジャズファンでなくても、普通に知られているから凄い。
ベニー・グッドマンの演奏で普通に知られているナンバーが何曲あるだろう。「Sing, Sing, Sing」、「Memories Of You」‥グレン・ミラーほど知られているかというと、どうだろう‥
単純に比較はできないが、それにアメリカと日本の事情の違いもあるだろうが、いずれにしてもグレン・ミラーのスタイルはメロディーが分かりやすく掴まえやすい(覚えやすい)。

慣れ親しんできたグレン・ミラーのヒット曲を、次から次へとたっぷりと聴くというのも、実に贅沢なもんである。しかもベニー・グッドマンとセットで━
そう言えば、ずいぶん前になるが横田基地在籍の太平洋空軍バンド「パシフィック・ショウ・ケース」と一緒に、「Glenn Meets Benny」(1981年 主催グレン・ミラー生誕地協会日本支部)と題したコンサートがあった。
グッドマンもミラーも若かりし頃、かつてベン・ポラック楽団で一緒だったことがあると言うことから生まれた企画で、もちろん「パシフィック・ショウ・ケース」がグレン・ミラーを、「鈴木正男 & SWING TIMES」がベニー・グッドマンを、まさにバンド合戦さながらにやった。歌はジェリー伊藤とタイムファイブと、それに長田明子。それは楽しいコンサートだった。
(そう言えば、「グレン・ミラー生誕地協会」の青木さん、最近ライブに見えないがどうしただろう。連絡してみよう…)
「ムーンライト・セレナーデ」に誘われて…
どことなくキラキラしてロマンチックな気分になって、何だかじっとしていられなくなる。
次回の「鈴木正男 & SWING TIMES」のライブは2月28日(月)南青山「MANDALA」である。
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