ビッグ・バンドでのギターリストというと、すぐに頭に浮かぶのはカウント・ベーシーオーケストラのフレディ・グリーンだろう。ベニー・グッドマンオーケストラならチャーリー・クリスチャン(特にビッグ・バンドというわけではないが)。「鈴木正男 & SWING TIMES」のギターというと蓮見芳男である。
蓮見芳男が「SWING TIMES」に参加したのは、「SWING TIMES」が結成してから1年後くらいかららしい。
トランペットの故福原 彰(「フランキー堺とシティ・スリーッカーズ」や「原 信夫とシャープス&フラッツ」などに在籍し、後に「夜空のトランペット」などのポップスや歌謡曲のジャンルでも知られた)に教えられて、「SWING TIMES」のライブを聴きに行ったのがきっかけだと言う。
その時にリーダーでクラリネットの鈴木正男から、「(前で吹いていて)いいギターが後ろから聴こえてくると安心する」と言われ、誘われたそうだ。
サウンドの上で、さらに安定したリズムの上で、ビッグ・バンドでのギターが如何に大切かをあらわした一言だと思う。
以来、すでに「鈴木正男 & SWING TIMES」在籍20余年になるという。
もともと「松本 伸とニューパシフィック オーケストラ」などのビッグ・バンドをはじめ、「レイモンド・コンデとゲイ・セプテット」に加わり、ビクターがらみで「誰よりも君を愛す」や「東京ナイトクラブ」などで大ヒットを飛ばした歌手の松尾和子(もともとはジャズ・シンガー)とともに進駐軍キャンプやナイトクラブなどで大活躍していた蓮見芳男である。
オーケストラでの呼吸はもちろん、酸いも甘いも歌心もとことん知り尽くしている。そういう面が表立ってなるほどと思わせるのは、長田明子のヴォーカル・タイムになったときである。

ビッグ・バンドがバックをつけない時は、ピアノ、ギター、ベース、ドラムスに、時にはサックスかトロンボーンが加わり、カルテットかクインテットで長田明子のヴォーカルをフォローする。
このヴォーカルにつけるピアノやギターでのイントロやソロが堪らなくいい。前にも書いたことだが、もともと長田明子のヴォーカルは声量もあり発声も正統的で妙なフェイクもしない、つまり小手先でこね回すような歌ではないだけに、イントロや間奏のソロなども中途半端では太刀打ちできまい。
その点、「SWING TIMES」のメンバーの、大橋高志のピアノはもちろん、蓮見芳男のギターには技巧だけではない旨みのようなものがあって、長田明子の歌を浮き上がらせている。
いつだったか他での、カルテットでのライブで、何気なくついでのように演奏した蓮見芳男フューチャーの「Cocktails For Two」うを聴いた時、つくづく思った。
何だか思わずニヤッとしてしまうような快さがある。テーマのメロディーラインをただなぞっているだけのような時でも‥しみじみといいな、と思えるのである。一体何が違うんだろう。
聴く側にとって、たとえその曲に特別な想いなどでなくても、あるいは初めて聴く曲であっても、無意識のうちに過去の記憶やその時の感情を投影させながら聴いているのに違いない。
だからそういう心の奥に潜むもろもろをかき立ててくれる演奏は、いい演奏ということになるのだろう。そこにはもちろん技術も必要だろうが、技術を超えた何かが大きく作用しているような気がする。
もしかしたら様々な状況の中で何回となくその曲を演奏したプレイヤーの経験から得た、その曲のエッセンスのようなものかも知れない。あるいはそのプレイヤーの人生経験から得たさまざまな想いなどが、その演奏の中に出てくるのかも知れない。
これは「SWING TIMES」ではないが、あるビッグバンドのライブを聴きに行った。
ゲストのヴォーカル・コーナーになって、4リズムのカルテットのバックでバラードを歌っていて間奏になった時、若手のトロンボーンがすっくと立ってアドリブ・ソロをとった。
それは見事なソロだった。客の拍手も一段と大きかった。が、どこか不満が残った。それは、このトロンボーン・プレイヤーはこの曲をよく知らないのではないかと思ったのである。
つまり彼はコードだけで吹いているのに違いない、と勝手に思ったのである。もちろんそれはそれでいいのだろうが、もともとのオリジナル曲の素晴らしいメロディーの持っている思いを生かしながらのソロにしたらもっと良かった、と勝手に思った次第である。
そしてジャズには、とくにスタンダードナンバー化した曲には、ファンのそういう思いの側面がきっとあるに違いないと改めて思った。
前述の、聴く側の心の奥に潜むもろもろをかき立ててくれる演奏、というのはそういうことなのである。
蓮見芳男に限らず、「SWING TIMES」にはクラリネットの鈴木正男を始め、そんな味わい深いベテランがそれぞれのセクションに何人もいて興味深い。
これからも、そんな「SWING TIMES」の秘蔵とも言うべき味のあるプレイヤーを、折りをみて一人づつ紹介していきたいと思う。
いつぞや2ビートの絶妙さについて、じっくりと蓮見芳男が話してくれたことがあった。
実はワルツもそうらしいのだが、2ビートにも絶妙なニュアンスがあって難しいものらしい。
昔はダンスホールやナイトクラブなど、踊る環境がたくさんあったから、2ビートを散々やらされた。だからその呼吸のような絶妙なニュアンスをいつの間にか身につけていったが、今は相当のプレイヤーでもそこまでは分かっているプレイヤーは少ない、と言っていた。
こちらはプレイヤーではないから、単に話だけで終わってしまったが、若いプレイヤーが聞いたらずい分参考になったろうにと思ったものである。
その蓮見芳男が昨年大病をした。今も治療をしながら演奏活動を続けているが、早く元気になって素晴らしい演奏を支える絶妙なカッティングを、そしてあのハートに届く音色を、フレーズを縦横無尽に奏でて大いに楽しませて欲しい。
蓮見芳男が「SWING TIMES」に参加したのは、「SWING TIMES」が結成してから1年後くらいかららしい。
トランペットの故福原 彰(「フランキー堺とシティ・スリーッカーズ」や「原 信夫とシャープス&フラッツ」などに在籍し、後に「夜空のトランペット」などのポップスや歌謡曲のジャンルでも知られた)に教えられて、「SWING TIMES」のライブを聴きに行ったのがきっかけだと言う。
その時にリーダーでクラリネットの鈴木正男から、「(前で吹いていて)いいギターが後ろから聴こえてくると安心する」と言われ、誘われたそうだ。
サウンドの上で、さらに安定したリズムの上で、ビッグ・バンドでのギターが如何に大切かをあらわした一言だと思う。
以来、すでに「鈴木正男 & SWING TIMES」在籍20余年になるという。
もともと「松本 伸とニューパシフィック オーケストラ」などのビッグ・バンドをはじめ、「レイモンド・コンデとゲイ・セプテット」に加わり、ビクターがらみで「誰よりも君を愛す」や「東京ナイトクラブ」などで大ヒットを飛ばした歌手の松尾和子(もともとはジャズ・シンガー)とともに進駐軍キャンプやナイトクラブなどで大活躍していた蓮見芳男である。
オーケストラでの呼吸はもちろん、酸いも甘いも歌心もとことん知り尽くしている。そういう面が表立ってなるほどと思わせるのは、長田明子のヴォーカル・タイムになったときである。

ビッグ・バンドがバックをつけない時は、ピアノ、ギター、ベース、ドラムスに、時にはサックスかトロンボーンが加わり、カルテットかクインテットで長田明子のヴォーカルをフォローする。
このヴォーカルにつけるピアノやギターでのイントロやソロが堪らなくいい。前にも書いたことだが、もともと長田明子のヴォーカルは声量もあり発声も正統的で妙なフェイクもしない、つまり小手先でこね回すような歌ではないだけに、イントロや間奏のソロなども中途半端では太刀打ちできまい。
その点、「SWING TIMES」のメンバーの、大橋高志のピアノはもちろん、蓮見芳男のギターには技巧だけではない旨みのようなものがあって、長田明子の歌を浮き上がらせている。
いつだったか他での、カルテットでのライブで、何気なくついでのように演奏した蓮見芳男フューチャーの「Cocktails For Two」うを聴いた時、つくづく思った。
何だか思わずニヤッとしてしまうような快さがある。テーマのメロディーラインをただなぞっているだけのような時でも‥しみじみといいな、と思えるのである。一体何が違うんだろう。
聴く側にとって、たとえその曲に特別な想いなどでなくても、あるいは初めて聴く曲であっても、無意識のうちに過去の記憶やその時の感情を投影させながら聴いているのに違いない。
だからそういう心の奥に潜むもろもろをかき立ててくれる演奏は、いい演奏ということになるのだろう。そこにはもちろん技術も必要だろうが、技術を超えた何かが大きく作用しているような気がする。
もしかしたら様々な状況の中で何回となくその曲を演奏したプレイヤーの経験から得た、その曲のエッセンスのようなものかも知れない。あるいはそのプレイヤーの人生経験から得たさまざまな想いなどが、その演奏の中に出てくるのかも知れない。
これは「SWING TIMES」ではないが、あるビッグバンドのライブを聴きに行った。
ゲストのヴォーカル・コーナーになって、4リズムのカルテットのバックでバラードを歌っていて間奏になった時、若手のトロンボーンがすっくと立ってアドリブ・ソロをとった。
それは見事なソロだった。客の拍手も一段と大きかった。が、どこか不満が残った。それは、このトロンボーン・プレイヤーはこの曲をよく知らないのではないかと思ったのである。
つまり彼はコードだけで吹いているのに違いない、と勝手に思ったのである。もちろんそれはそれでいいのだろうが、もともとのオリジナル曲の素晴らしいメロディーの持っている思いを生かしながらのソロにしたらもっと良かった、と勝手に思った次第である。
そしてジャズには、とくにスタンダードナンバー化した曲には、ファンのそういう思いの側面がきっとあるに違いないと改めて思った。
前述の、聴く側の心の奥に潜むもろもろをかき立ててくれる演奏、というのはそういうことなのである。
蓮見芳男に限らず、「SWING TIMES」にはクラリネットの鈴木正男を始め、そんな味わい深いベテランがそれぞれのセクションに何人もいて興味深い。
これからも、そんな「SWING TIMES」の秘蔵とも言うべき味のあるプレイヤーを、折りをみて一人づつ紹介していきたいと思う。
いつぞや2ビートの絶妙さについて、じっくりと蓮見芳男が話してくれたことがあった。
実はワルツもそうらしいのだが、2ビートにも絶妙なニュアンスがあって難しいものらしい。
昔はダンスホールやナイトクラブなど、踊る環境がたくさんあったから、2ビートを散々やらされた。だからその呼吸のような絶妙なニュアンスをいつの間にか身につけていったが、今は相当のプレイヤーでもそこまでは分かっているプレイヤーは少ない、と言っていた。
こちらはプレイヤーではないから、単に話だけで終わってしまったが、若いプレイヤーが聞いたらずい分参考になったろうにと思ったものである。
その蓮見芳男が昨年大病をした。今も治療をしながら演奏活動を続けているが、早く元気になって素晴らしい演奏を支える絶妙なカッティングを、そしてあのハートに届く音色を、フレーズを縦横無尽に奏でて大いに楽しませて欲しい。
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