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アコースティックで、ハッピーなSwingのオーケストラ「鈴木正男& SWING TIMES」のブログ。頭の奥に、心の裏側に、身体の隅々まで届く軽い音楽のメッセージ。2011年には25周年を迎えます。
ジャズ好きのある男が、バーモント州の州都モントピリアのホテルに泊まった。
ビジネスを済ませホテルに戻ってくると、ロビーの奥のボウルルームらしき扉の奥からあのクラリネットに縁どられた柔らかいサウンドが洩れてくる。
近くに寄ってみると、入り口のたて看板に「今夜のバンド“グレン・ミラーオーケストラ”」とあった。
根が好きなだけに男はうれしくなりボウルルームの扉を開けて中へ入ろうとして、フト足を止めた。
窓際の小さなテーブルと椅子の脇の、身だしなみを調えるためのミラーに、窓から覗く満月が映っていたのである。まさに「Moonlight In Vermont」。
そして扉の奥から洩れ聴こえてくるのが、おあつらえ向きに「Moonlight Serenade」。
彼は中へ入るのを止めてこうなれば徹底的に凝ってやろうと、ロビーに戻り通りかかったホテルマンを捕まえるとある酒を注文し、さっきの場所に戻った。
最近はあまり馴染みもなく、バーの棚の奥に1本だけ残っていたと言うトウモロコシ(80%)とピート香を付けていない大麦麦芽(20%)を混ぜ連続蒸留したボトルとグラスをバーテンが持って来た。
窓際の小さな椅子に腰を下ろし、立てかけたミラーに映るムーン・ライトを浴びながら、さらに扉の奥からの緩やかに流れるようなムーンライト・セレナーデに浸りながら、そしてグラスの中のグレン(ウイスキー)を舐めながら、何もかもすっかりグレン・ミラーに酔いしれた。
Glenn Miller

グレン・ミラーのテーマでもある「Moonlight Serenade」を心地よく聴いていて、こんな小噺をムリヤリ捻ってみた。
何年か前までは、「鈴木正男 & SWING TIMES」のライブの、グレン・ミラーのナンバー中心の第2部は必ずこの「Moonlight Serenade」で始まった。
最近はちょっとしたサプライズというか、珍しいナンバーを挟んでお馴染みのナンバーを次から次へと楽しませてくれる。
この「Moonlight Serenade」が始まると会場の雰囲気がパッと明るくなり、お客さんの間にホッとした空気が流れ、拍手が湧く。本当にみんなこの曲が好きである。

グレン・ミラーの古いレコードを引っ張り出して改めて聴いて見ると、テンポがかなり遅い。
普段あちこちで聴くテンポに慣れ普通に思っていた耳には、驚くほどゆっくりとしている。はじめ驚くが、いつの間にか引き込まれて聴き入ってしまう。そうか、昔はこんなテンポでやっていたんだ。
我々が盛んに聴いていた昭和30年代もこんなテンポだったんだろうか。
それにしてもいつから今のようなテンポになったのだろう。一度色々なオーケストラの演奏を、1945年(グレン・ミラーが亡くなった翌年)頃から録音月日を確かめながら聴いてみようか。面白いかもしれない。

さて「鈴木正男 & SWING TIMES」のグレン・ミラーもののレパートリーというと、もちろん「Moonlight Serenade」だけではない。
・In The Mood
・American Patrol
・String Of Pearl
・Pennsylvania 6-5000
・Little Brown Jug
・St. Louis Blues March
・Tuxedo Junction
・Song Of The Volga Boatman
・Danny Boy etc.
これらのナンバーは特にジャズファンでなくても、普通に知られているから凄い。
ベニー・グッドマンの演奏で普通に知られているナンバーが何曲あるだろう。「Sing, Sing, Sing」、「Memories Of You」‥グレン・ミラーほど知られているかというと、どうだろう‥
単純に比較はできないが、それにアメリカと日本の事情の違いもあるだろうが、いずれにしてもグレン・ミラーのスタイルはメロディーが分かりやすく掴まえやすい(覚えやすい)。
Benny Goodman

慣れ親しんできたグレン・ミラーのヒット曲を、次から次へとたっぷりと聴くというのも、実に贅沢なもんである。しかもベニー・グッドマンとセットで━
そう言えば、ずいぶん前になるが横田基地在籍の太平洋空軍バンド「パシフィック・ショウ・ケース」と一緒に、「Glenn Meets Benny」(1981年 主催グレン・ミラー生誕地協会日本支部)と題したコンサートがあった。
グッドマンもミラーも若かりし頃、かつてベン・ポラック楽団で一緒だったことがあると言うことから生まれた企画で、もちろん「パシフィック・ショウ・ケース」がグレン・ミラーを、「鈴木正男 & SWING TIMES」がベニー・グッドマンを、まさにバンド合戦さながらにやった。歌はジェリー伊藤とタイムファイブと、それに長田明子。それは楽しいコンサートだった。
(そう言えば、「グレン・ミラー生誕地協会」の青木さん、最近ライブに見えないがどうしただろう。連絡してみよう…)

「ムーンライト・セレナーデ」に誘われて…
どことなくキラキラしてロマンチックな気分になって、何だかじっとしていられなくなる。
次回の「鈴木正男 & SWING TIMES」のライブは2月28日(月)南青山「MANDALA」である。
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【2011/02/12 09:55】 | レパートリー
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師走になって、寒くなって、何となく気ぜわしくなって、何をやってもこんなことをしていていいのだろうか、などとどことなく落ち着かない時に聴くといい曲がある。

「Sometimes I’m Happy」である。
「鈴木正男 & SWING TIMES」の得意な曲で、というよりリーダーの鈴木正男が大好きな曲で時々聴かせてくれる。
2ビートの、時々ではなく聴くときはいつも幸せな気分にしてくれる。いや、時々しか聴かれないんだから、やはり時々か━
印象としては、毎年恒例の大晦日のカウント・ダウンライブの時には毎年聴いて温かい心持になれ、まるで大晦日の深夜聴く曲のように思う。

そう、曲想も歌詞もゆったりとしていて温もりがある。(詞アーヴィング・シーザー、曲ヴィンセント・ユーマンズ)
時々、しあわせだったり
時々、憂うつだったり、
僕の気持ちはいつも君しだい‥

Sometimes I’m happy, sometimes I’m blue
My disposition depends on you
I never mind the rain from the skies
If I can find the sun in your eyes
Sometimes I love you, sometimes I hate you
But when I hate you, it’s cause I love you
That’s how I am, so what can I do?
I’m happy when I’m with you

歌詞は何人かが関わり(オスカー・ハマースタイン二世など)、紆余曲折あって最終的にアーヴィング・シーザーの今のものになったらしい。
曲は1923年ごろというから相当古い。昔の人はずい分洒落たセンスを持っていたものだと感心する。
clarinet

そういう意味ではこの手の曲は演奏する側のセンスも問われる曲なのかもしれない。
その点、「鈴木正男 & SWING TIMES」はベテランと中堅プレイヤーがうまく融合した、特異なバンドと言える。
特にサックスのラインとリズムセクションは、まさに酸いも甘いも噛み分け粋さを醸す芸達者ぞろい。絶妙なアンサンブルと2ビートが心地いい。

この「Sometimes I’m Happy」を演奏している時の鈴木正男の、クラリネットを吹いている時もさることながら、クラリネットを片手に身体を揺らしている表情と様子は気持ち良さそうでつい顔がほころんでしまう。
仕事や生活のストレス、あるいは暮れ独特の寂寥感をもやんわりと包み込んで、ホッとさせてくれるのである。

SWING TIMESでは演奏だが、この曲は男性・女性どちらも好んで歌われているようで、男性ヴォーカルだと個人的にはナット・キング・コールがしみじみといい。それにミルス・ブラザーズもいい。
女性ヴォーカルならドリス・デイ、ジョー・スタッフォード、ジューン・クリスティetc.‥いい曲は誰が歌っても、それぞれの味が滲み出て楽しめるものである。

演奏ものだとやはりベニー・グッドマンにいってしまう。
前にも紹介したが(「ベニー・グッドマンに沿う━」)、SWING TIMESの「Sometimes I’m Happy」は、「ベニー・グッドマンライブラリー」のあるアメリカのイエール大学から提供された、ベニー・グッドマンが実際に使っていた楽譜での演奏であり、今一番グッドマンの味わいが楽しめると言っても過言ではないだろう。

今年、2010年も後わずか‥
大晦日には「鈴木正男 & SWING TIMES」の豊かなサウンドで「Sometimes I’m Happy」の洒落たしあわせ感に浸り、そのまま2011年のしあわせ始めにしたいものだ。

●12月31日(金)『Swing Jazzで年越しを!カウント・ダウン in 南青山MANDALA』
 Open 21:00 Start 22:00~元旦深夜まで(3set)
 Charge 一般(3set)¥5,500(1drink付)、学生(3set)¥2,500(1drink付)
 チケットのお求めは━南青山「MANDALA」 tel (03)-5474-0411

【2010/12/14 09:46】 | レパートリー
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今までの「鈴木正男 & SWING TIMES」のライブのプログラムや、記録で残している音源などをつらつらと見ながら聴きながら彷徨っていた。
そこで本稿の1回目「Let’ Swing!」でも紹介した、6月28日のライブでの「Dou Know What It Means To Miss New Orleans?」を見つけた。

私ごとながら、長いこと観たいみたいと思いながらも観られないでいた映画があった。日本で公開はされておらず、つい最近までビデオなども市販さていなかったと思う。なのにも関わらず観たことのある人がいて悔しく思ったものだ。
New Orleans DVD

「New Orleans」(監督アーサー・ルービン、1947年公開。アメリカ)である。
イラストレーターであり、映画監督でもある和田 誠氏によると1960年代に初めてテレビで放映されたという(著書「映画とジャズ」より)。
その後何回かはテレビで放映されたのだろう。私はクラリネットの鈴木孝二氏にビデオを借りて、やっと観ることができた。
そしてその後著作権が切れたのか、DVDで売り出され500円で買った。あんなに観たいみたいと思っていたものが、あっけなく手に入り拍子抜けしたものだ。

まだご覧になっていない方がいらしたら、是非一度観ておいたらどうだろう。
ビリー・ホリデイが出演した唯一の劇映画であり、またルイ・アームストロングや、バーニー・ビガード、キッド・オリー、バンク・ジョンスンなど、そうそうたるメンバーが出演し、演奏しているのである。それを観・聴きするだけでも相当な価値があるだろう。

ところで今日は、映画「New Orleans」の話ではない。その映画「New Orleans」の主題歌(曲)が「Do You Know What It Means To Miss New Orleans?」(詞エディ・デランゲ、曲ルイ・アルター)であり、ライブの記録の中で見つけたので「SWING TIMES」のレパートリー紹介を兼ねてお話ししようというのである。

1947年公開のこの映画のオリジナル曲であるから、他のスタンダード曲と比べてそう古い曲ではない。が、好い曲だと思う。
初めて聴いた時、初めて聴いたにも関わらず「懐かしい」という気持ちがこみ上げてきた。もちろん歌詞の意味も知らず、また英語も得意ではないからあの長いタイトルを言われても、すぐに意味も分からずにいた。なのに、何だか無性に懐かしく思ったことを憶えている。

以来、この「Do You Know What It Means To Miss New Orleans?」が個人的に好きになった。
ただあまりにタイトルが長く一気に言おうとすると舌を噛みそうになるので、普段は前を全部略して、ただ「ミス・ニューオーリンズ」と片付けてしまう。
知らない人に「ミス・ニューオーリンズが好きで━」と言うと、ミス・ジャパンなどと同じに女性のことかと思われそうだが、もちろんそうではない。
「失う」などの意味の「ミス」で直訳すれば、ニューオーリンズを失う(忘れる)ということはどういうことか分かるかい?とでもなるんだろうか。意訳すれば「懐かしのニューオーリンズ」とでもいおうか。
2005年のハリケーン カトリーナでニューオーリンズを離れることを余儀なくされた人たちには、まさに故郷ニューオーリンズを恋う曲といえる。
鈴木正男 & SWING TIMES

あの6月28日のライブの日、個人的に私が好きな曲ということをどこかで聞いて知っていて、リーダーがプログラムの中に入れたくれたと言う。
休憩時間にそのことをリーダーから聞いて喜んでいるところへ、「グレン・ミラー生誕地協会」の青木秀臣氏が顔を出し、「やあ、ありがとう!ホントにやってくれたんだ、大好きなミス・ニューオーリンズ、好かったよ!」だって━
何のことはない、ミス・ニューオーリンズの大好きなヤツが2人いるから、まとめて面倒見ちゃえ!というだけのことである。
とはいえ好かった。普段コンボや歌で聴くことは結構あるが、ビッグ・バンドのクラリネットで聴けるチャンスなどそうはない。名曲であり、名演だった。

これから時々、「SWING TIMES」のレパートリーを少しづつ紹介していこうと思う。
ライブのプログラムは毎回載せていきますが、そんな中から、あるいは埋もれている曲などを取り上げて、できれば演奏時のエピソードなども混ぜながら紹介していきましょう。

次回の「鈴木正男& SWING TIMES」の定期ライブは━
●10月27日(水) 南青山「MANDALA
open 18:30 start 19:30 charge 
一般(2set)\4,500(1drink付)、学生(2set)\2,500(1drink付)
●12月31日(金)大晦日は「Swing Jazzで年越しを!カウント・ダウン in 南青山MANDALA」
open 21:00 start 22:00~元旦深夜まで
charge 一般(3set)\5,500(1drink付)、学生(3set)\2,500(1dring付)
チケットのお求めは━南青山「MANDALA」 tel 03-5474-0411

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【2010/10/16 11:44】 | レパートリー
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